山野草(Ⅰ)
足尾山地の植生は、大きい標高差(約1,400m)と崩壊裸地での足尾固有の植生環境、そして過去の煙害による影響等、自然的にも人工的にも特異な条件のもとで成り立っています。
足尾山地の植生は、大きい標高差(約1,400m)と崩壊裸地での足尾固有の植生環境、そして過去の煙害による影響等、自然的にも人工的にも特異な条件のもとで成り立っています。
気候に関しては山地の標高が高いことから、夏は涼しく、冬は乾いた季節風が吹き土壌が凍結するほどの寒さですが、積雪はそれ程多くありません。
このような足尾固有の自然の中で育まれた植物群を紹介します。
自然に恵まれた足尾は植物の宝庫といえるでしょう。その中でも国の特別天然記念物に指定されているコウシンソウは足尾を代表する植物といえます。
⇒ フォトギャラリー/庚申草
Ⓐコウシンソウ ⇒ Ⓑけなげな樹木 ⇒ Ⓒ春咲く植物 ⇒ Ⓓ夏咲く植物 ⇒ Ⓔ秋咲く植物 ⇒ Ⓕ樹木 ⇒ Ⓖ帰化植物 ⇒ Ⓗ実のなる植物
庚申山の垂壁に淡紫色の小さく可憐な花が、人知れず咲いています。
他の植物に追いやられ、生育しづらい場所で けなげに生き抜くことが宿命の
"コウシンソウ"は、根から吸収する養分の不足分を虫から補充するように進化した食虫植物です(写真:2011/06/16)。
その分類からは恐ろしいイメージが先行しますが、食虫植物はイメージとは異なり上記(01.)のように他の植物に追いやられ植物が生育しづらい場所で健気に生きる、とても控えめで繊細で我慢強い植物なのです(写真:2008/06/14)。
庚申山は原生林の豊かな山ですが、コウシンソウの生育地は垂直な岩壁ですので、崖崩れや落石などによる自生地の自然崩壊の懸念があります。撮影、観賞、観察時の周辺環境破壊はもちろん御法度です。
♦(提案) 庚申ガラパゴス岩壁 : コウシンソウの生息している岩壁は、特異な生物相を持つガラパゴス諸島と同類と考えられるので
「庚申ガラパゴス岩壁」 と称して、環境破壊から岩壁を保護しコウシンソウを守りましょう。
♦
コウシンソウのカテゴリー:レッドデータブック(絶滅のおそれのある野生生物の種リスト)で指定されているコウシンソウのカテゴリーは「絶滅危惧 II
類(VU)Vulnerable」で、その定義は「絶滅の危険が増大している種」です。
♦ コウシンソウ(6月のスナップ写真)
足尾山塊荒廃の原因の一つは、製錬所からの鉱煙です。それが風にのり、松木川に沿って皇海山のふもとまで運ばれ草木は枯れてしまいました。
ほかの要因として、足尾山地特有の気象条件があげられます。夏の集中豪雨、冬の寒風、凍土により地面が持ち上がり表土は脆くなり、地表面は風雨に浸食され基岩が露出してしまいました。
その中でも特に過酷な場所で芽生え生長し、今もけなげに生きている樹木たちのお話をしましょう。
鉱煙により壊滅的な打撃を受けた松木川沿いの稜線に、すっくと立つ一本の木があります。それは、中倉山稜線の表土が流出してしまった岩くずだらけの過酷な松木側の尾根筋で生きているブナの木です(左右写真:2013/09/20)。
ブナの根は地中深く食い込み、夏の集中豪雨による土石の流出を食い止め、冬の風雪に対しては独りで耐え、ほんの時たま訪れる登山者たちとの対話を何よりの楽しみとして生きています。
(上掲右の写真をマウスでロールオーバした時に変化する写真は、アップで撮影したものですが長い鼻の象の横顔に似ていませんか?)
♦孤高のブナ:かつて製錬所から流れ出た亜硫酸ガス等の影響で足尾の山は荒廃した。草木の枯れた中倉山(1539m)の尾根に生き残った一本のブナの木がある。いつしか登山者たちはこの木を「孤高のブナ」と呼ぶようになった。
♦沢入山とブナの木
♦中倉山とブナの木
⇒ 中倉山・孤高のブナ
利根倉沢に沿った中禅寺古道のかたわらに、岩と岩のわずかな隙間で耐えているリョウブの木があります。
芽生えた所が岩と岩のわずかな空間だったのでしょうか。その岩と岩のわずかな隙間を潜り抜けて生長したリョウブの木です。
何かの拍子で岩がずれてしまったらと思うと、これほど深刻な状況下に置かれた樹木に出会ったことはありません。左の写真は挟まれた幹のクローズアップ(左右写真:2011/12/12)。
♦ 中禅寺路 : 足尾から阿世潟峠を経て中禅寺湖南岸に通じる街道は、久蔵沢から長手沢をさかのぼる沢沿いの道で、中禅寺路といわれていました。
品振山(シナブリ山)は足尾の町並みのほぼ全域から望むことができ、渡良瀬地区の東に位置しています。その品振山の中腹に位置するテレビ中継塔を通り過ぎて石の連なる急斜面を登り進むと、一本のヒノキに出会いました。
石を割って出て来たのか、落石で挟まれたのか、どのようにしてこのような状態になったのか分かりません。しかし健気に生きています(左右写真:2018/03/14)。
庚申山に至る "水ノ面沢"
沿いの山道にはたくさんの樹木が、岩の上で生きています。岩を抱きかかえるように根を絡み付け、地中に伸び広がって幹をささえています
(右写真:2011/06/16)。
雨により土石が流され斜面は深く浸食され、岩の上の若木は根こそぎ倒される危険性があります。石をしっかりとつかんで地面に根を張るまでは安心できません。実際、地中深く根を張るまえに倒されてしまう樹木もたくさんあります(上左写真:2011/06/16)。
そうして木が倒れ、ぽっかり空いた頭上からは光が差し込み新たな発芽床となり、そこから新しい芽生えがまた始まるのです。
(上掲写真をマウスでロールオーバした時に変化する写真も同日撮影。)
♦ 発芽床 :
種子が順調に発芽できる場所をいう。発芽床は、植物の種類によって違いがありますが森林の中では土壌より、倒木やコケの生えた岩の方が、生育を妨げる菌類が少ないため、より良い発芽床といえるのです。
流出した岩石や小石がせきとめられて出来た "仁田元堰堤" の河川敷、更に悪いことには出水時に水に浸る過酷なその場所で、孤高に生きる一本のナラの木があります。
左の写真はアップ撮影、右写真の背景は中倉山(左右写真:2012/05/05)。
♦仁田元沢に生きるナラの木
早春、ツクシは青空をツンツンと、つっつくようにして生えます。まさに春を告げる使者なのです。なのに雪の中で凍えているツクシを発見してしまいました。しかも若く元気なツクシでなく、もはや胞子を飛ばし、役目を終えたとばかりに隠居していたツクシです。そのしおれたツクシが死力を尽くし、雪の中から顔を出してた姿に哀れさを感じシャッターを切りました。
(写真:渡良瀬公園でのツクシ:2010/04/18)
♦前日の降雪ニュース:
2010年4月17日朝、関東地方の広い範囲で雪が降った。東京都心などの降雪は、観測開始以来最も遅い記録(1969年)に41年ぶりに並んだ。
足尾町の自然を描写した歌曲があります。
"春晴千里水清く
霞とまごう桜花
いま酣の渡良瀬や"
作詞作曲:青山 勇
このように昔から春の渡良瀬といえばサクラの花が挙げられてきましたが、まさに上掲写真は歌詞さながらの、"花の渡良瀬公園"での春の風景です。
(上左写真:花蜜を吸うメジロ)
(上中写真:掛水倶楽部)
(上右写真:渡良瀬橋)
♦花の渡良瀬公園から掛水倶楽部
♦花の渡良瀬公園
漱石著 「坑夫」 の中の主人公が銅山(やま) へ行く場面で、 「山の中に山があって、その山の中に又山があるんだから馬鹿々々しい程奥へ這入る訳になる。この模様では銅山のある所は、定めし淋しいだろう。」
と述べています。
その銅山施設が全部撤去された跡地に広がる "小滝の里"
に、一本のコブシの木が立っていました。大きく純白の花を付け、遠くからでも目立つ存在ですが、なぜか寂しさが感じられます。崩れたレンガ構造物、崩れた石段、崩れた石垣が背景にあるからでしょう(左右写真:2011/04/28)。
♦"小滝の里" に咲くコブシ
息を切らして登るこの私を、アカヤシオの花が左右から、そして前後から淡い桃色の光で染め続けます。 「アカヤシオの花に囲まれているのは、もうたくさんだー」
と思い始めたころ、小丸山(1676m)に登り着きました。そこからの眺望もやはり青空を背景にしたアカヤシオの花のオンパレードでした。そういう訳でツツジの花を愛でるには、晩春から初夏にかけての袈裟丸山(栃木・群馬県境)が、お勧めです。
(上左写真:前袈裟丸山の東に位置する小丸山から皇海山、庚申山眺望)
(上右写真:天下の見晴らし(標高1500メートル)から庚申山眺望)
♦"天狗の投石" に咲くアカヤシオ
石や大岩に妨げられ変化に富んだ久蔵沢の源流を釣り進む新緑の中、風に吹かれながらも懸命に咲いていたスミレです(写真:2006/05/03)。
ネコヤナギは川辺に自生する落葉低木です。しかし、このネコヤナギは水辺から離れた本山の山腹で生育しているので、ヤマネコヤナギでしょうか。どちらにしても早春に他の花よりも一足早く花を咲かせる姿に、私の心はうきうきします(写真:ネコヤナギの雄花:2008/03/30)。
ヤマザクラは古来より和歌などにも数多く詠まれている桜です。多くの場合、葉芽と花が同時に開き、幼葉は赤みがかっています。そのため遠目には花が赤っぽいように見えます。今年も山里独特の春を演出してくれました。
(左右写真:2007/05/04)
♦ 「古今和歌集」(巻一)春歌上・五十一番
"山桜我が見にくれば春霞峰にもをにも立ち隠しつつ" 作者未詳
"山桜を私が見に来ると、春霞が峰にも尾にも隠すように立ちこめている"
♦ 勝手な解釈:「一瞬、春霞が山桜を隠していると思ったが、よくよく見ると霞ではなく、山一面桜の花だった。」
私がそう考える根拠:"春晴千里水清く 霞とまごう桜花 いま酣の渡良瀬や"『足尾の四季』から引用
庚申山を眺める地点(ビューポイント)は、庚申山荘とほぼ同じ標高の "天下の見晴し台"(1500m)
が、お勧めです。その高台の頂上には、写真のように大きな岩が鎮座しています(左写真)。
その "天下の見晴し台"に、"シモツケ"の花が咲いていました(右写真)。
多年草の "シモツケソウ"という名前の植物の方が、一般的で馴染み深いかと思いますが、写真の
"シモツケ"は落葉低木の仲間です。いずれにせよ旧国名そのままのネーミングは大変珍しいことと思います。
♦下野国(しもつけのくに): 律令制に基づいた地方行政区分の令制国の一つで現在の栃木県とほぼ同じ領域の国。
♦シモツケ :
バラ科シモツケ属の落葉低木。別名、キシモツケ(木下野)とも呼ばれる。
♦シモツケソウ : バラ科シモツケソウ属の多年草。別名、クサシモツケ(草下野)とも呼ばれる。
人の気配がまったくない、静かな庚申山のお山巡りのみちを反時計回りで登っているときでした。突然目の前で白い花が 「コンニチハ」と、私を出迎えてくれました。
(左写真:2008/06/14)
(右写真:2010/06/11)
♦ゴヨウツツジとも呼ばれるシロヤシオ
♦高木に生長したシロヤシオ
⇒ お山巡りのみちへ
庚申山の登り途中でお会いした下山者の方から 「シャクナゲが咲いてます」 と、知らされたその尾根筋に出ると、シャクナゲの花が風に吹かれて微笑んで、待っていてくれました。
(写真:2008/06/14)
♦ピンク色のシャクナゲの花
庚申山荘裏と猿田彦神社跡の二ヶ所で群生しています。花色はピンクや白などの変種も知られていますが、庚申山の"クリンソウ群"は基本種の真紅一色で、しかも野生種の為、花名の九輪草のイメージと共に荘厳な雰囲気が感じられます。
(左写真:2008/06/14)
(右写真:2011/06/20)
♦クリンソウもユキワリソウと同様サクラソウの仲間で、山間地の、比較的湿潤な場所に生育し、時には群生する。
♦クリンソウ : (学名
Primula japonica) 学名が示すとおり、わが国原産のプリムラです。
Primula(プリムラ)は、primos(最初)が語源。早春、他に先駆けて花が咲くことから。
♦クリンソウ / 庚申山荘裏にて
庚申渓谷林道の"天狗の投げ石"手前で散りかけたツリフネソウが咲いていました。
今にも散りそうな風情の花を写そうとレンズを向ける。しかし風の為、なかなかシャッターチャンスがなく苦労して撮影した一枚です。
(写真:2007/09/16)
タデ科の植物で、秋の野原で最も目に付くのは"イヌタデ"でしょう。別名、アカマンマとも呼ばれ、子供達のママゴト遊びに使われたものです(写真:2008/10/04)。
植物には、イヌのついた名前のものが沢山あります。これらは、たいてい 「あまり役に立たないから」 といった程度の意味でつけられたそうです。イヌの名前のついた植物さんたち、あまり気にしないで下さい。より適切な名前の由来がある筈ですから。イヌタデもホンタデ(ヤナギタデ)に対し、辛味がないタデからイヌの名がつけられたようです。
ともあれ、タデの名の付く花々は秋を代表する野の花であることには変わりありません。
♦蓼食う虫も好き好き :
タデの葉には辛味がある。それでもそれを好んで食べる虫もあって十人十色と言う事の比喩だそうです。その葉を食う虫としては甲虫類のイチゴハムシや蛾類のシロシタヨトウ等が挙げられる。
もっとも、タデにもいろいろの種類があり、日本には50種程度自生しているが、散歩道で見るタデのほとんどはこの辛味があるタデではない。辛味があるタデは本物のタデの意味でホンタデ(ヤナギタデ)と呼ばれるタデだけで、残りは辛味の無いタデなのだそうです。
晩夏から初秋にかけて、ミズヒキ(水引)と呼ばれるめでたい名前を持った花が、野山を彩ります。ミズヒキもタデ科の植物ですが、これほど形体と名称がぴったりと合致した植物は、他に見あたりません。それゆえ、この花の名前は一度覚えたら絶対に忘れません。
(左写真:2008/10/04)(右写真:2019/09/20)
深沢雨量観測局の脇にある沢沿いに生えている桂の木。何本もの幹が連立して生え、写真のような独特の姿になっています(写真:2008/01/20)。
⇒ けなげに生きる
"一の茶屋跡のカツラ" へ
写真は銀山平展望台への登り途中でのコナラの木です。ナラの木は日本各地の山野に見られる落葉高木で、縦に大きく筋の入った幹が特徴的です。
撮影時、葉はまだ出ていませんでしたが若葉の出るのと同時に、黄緑色の雄花を下垂させ、秋にはドングリの実が出来ます(写真:2008/03/30)。
晩秋から早春の山では、落ち葉を踏みしめて歩く楽しさがあります。とくに葉の長さが20cmから40cmにもなるホオノキの白っぽい落ち葉の上を歩くときは、たいへん楽しいものです。
他感作用のためホオノキの樹冠下では他の植物が生えることが少なく、ホオノキの落ち葉が目立ちます。そのうえ多くの葉が白っぽい裏面を上にして落ちているので、辺り一帯は更に明るい雰囲気に包まれます。
(何故ホオノキの落ち葉は白い裏面を上にして落ちているのかは分かりませんが (?_?)。)
(写真:地蔵岳頂上付近にて:2009/09/10)
♦地蔵岳(1274m):撮影地の地蔵岳は、夕日岳と尾根続きの地蔵岳(1483m)ではなくて、足尾町の南端に位置する地蔵岳です。
♦他感作用(アレロパシー):ある植物の落葉や根などから分泌する他感物質により、他の植物の生長を抑えたり、動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりする効果の総称。
ホオノキは全国の山林で普通に見られる日本原産の落葉高木です。樹高は20メートル以上にもなり、葉の長さも30cmと非常に大きく、初夏に咲く花も大形で直径20cmにもなり、日本の樹木としては最大級で、大きな葉と花は遠くからでも目立ちます。
ホオノキの漢字名は "朴の木"で、"朴" の字の語意は
"飾った所が無い"、とのことですが、朴の木の樹高は高く葉も花も大きく非常に目立つ存在です。漢字名と相反しているところが愉快です。
♦ホオノキ :
ホオの名は包むに由来する。葉は古くから器代わりに用いられてきた。また、落ち葉は味噌や他の食材をのせて焼く郷土料理の材料として利用されてきた。"ほおばみそ"で飲む酒は美味いソウデス。
♦朴葉味噌
: 枯朴葉の上に、みりん又は少量の水、砂糖を入れた味噌をのせ焼いて食べる飛騨の郷土料理です。好みに応じてネギなどの薬味、山菜、キノコ、肉、などを混ぜて弱火でじっくりと焼きます。
仁田元(にたもと)沢に沿った林道の標高点826m付近で自生していたリョウブの木です(写真:2009/09/17)。
樹皮は薄くはがれて表面がまだら模様で滑らかになるのでサルスベリと似た幹肌になっています。リョウブは伐採にもよく耐えて萌芽し再生する性質を持っているので、ここ仁田元沢に沿った二次林でも多く生育しているのでしょう。
リョウブ(令法)という変わった名前は、救荒植物として育て蓄えることを法令で定めたことからといわれ、昔は飢饉のときの救荒植物として利用されたそうです。
♦
二次林 : その土地本来の自然植生が、災害や人為によって破壊された跡に、土中に残った種子や植物体の生長などにより成立した森林。
♦
救荒植物(きゅうこうしょくぶつ) : 飢饉、戦争その他で食料が不足した時に食される植物。救荒植物は毒消し、あく抜きなどの手順が煩雑な為、やむを得ぬ時以外は手を出さないというものがほとんどです。
♦リョウブ / 安蘇沢林道にて
初夏の山路を歩く時、ひそかに願っている事がありました。それは "卯の花"を愛でながら
"ホトトギス"の鳴き声を聴くことです。長年の夢でしたが、2009年6月18日庚申山お山巡りのみちを歩いている時に実現しました。ひとりでに唱歌
『夏は来ぬ』を口ずさんでいました(写真:庚申渓谷林道にて:2008/06/14)。
♦(私の仮説) ホトトギスの鳴き声の先生はウグイスか
ホトトギスとウグイスは托卵相手でウグイスが育ての親です。ホトトギスの忍音(しのびね)は平安の昔から価値あるものとされ、ウグイスの初音(はつね)は日本三鳴鳥の一つとされ、双方とも美しい鳴き声の持ち主です。
ホトトギスとウグイスが同時に鳴いているのはよく耳にすることで、ホトトギスは「トッキョ、キョキャキョキョ」と鳴き、ウグイスは「キョキョキョ、ケキョケキョケキョ、ホーケキョ」と鳴き、「キョキョ」のところがすこし似ています。まさにホトトギスは育ての親ウグイスを、お手本としているかのように思えます。
(双方の鳴き声を聴いての私の想像です(^_^;)。
)
卯の花と言えば、唱歌の 『夏は来ぬ』を 思い出します。
『夏は来ぬ』 作詞:佐佐木信綱 作曲:小山作之助
"卯の花の匂う垣根にホトトギス早も来鳴きて忍び音もらす夏は来ぬ"
(ウツギの白い花の色が鮮やかに映えている垣根に、ホトトギスが今年も来て鳴き始めた。ああ、夏がやって来たのだなあ。)
ホトトギスの鳴き声の聞き做し(ききなし)は一般に " テッペンカケタカ " または " 特許許可局 "と言われています。このホトトギスの鳴き声は私の耳には "トッキョ、キョキャキョキョ"と聞こえますが、いずれにせよ、とても清々しい気持ちになれます。
鉄道線路に敷いてあるバラストを積み上げたような厳しい環境でも生育する帰化植物は多く、足尾でも例外ではありません。
ヤマメ釣りの途中、松木川河川敷で小石の間で黄色い花が咲いていました。
(写真:2004/07/19)
♦ビロード毛蕊花:ヨーロッパからの帰化植物で、背丈が高く、太い真っ直ぐな茎に黄色い小花が多数ついて穂状に咲く。
♦蕊(ずい):雄しべ、 雌しべの総称。
ヤマメ釣りの途中、久蔵川河川敷の砂地でピンク色の花が咲いているのを見つけました。元々は江戸時代に観賞用に導入されたようですが、現在では各地の荒れ地などに生育しているそうです(写真:2006/06/25)。
庚申渓谷を散策しているとクサギの白い花と紫色の実が目に飛び込んできました。
クサギはもちろん「臭木」の意味で、葉をもむとカメムシのような独特の臭気が漂います(個人的には、それほど悪臭とは感じませんが、)。
それに比べ、花や果実は葉の悪臭とはずいぶんと違い、花は清楚で果実はユニークな色と形です。
8月から10月の暑い季節、クサギは次々と白色の花を咲かせます(左写真)。
果実は秋に黒紫色に熟し、5裂した赤紫色のがく(萼)が花弁のようで、面白い形になりました(右写真。
庚申渓谷林道でキウイフルーツの原種といわれるサルナシの実に出会いました。
実が梨の形に似て、猿がよく食べるのでサルナシと付けられたそうです。果実は2cmほどで、味はキウイフルーツに似ています(写真:2007/09/02)。
宇都野橋近くの道端で出会ったホオズキの実。日本原産のナス科の植物だそうです。その赤い実から鬼灯とも書き、お盆のお飾りには欠かせません。
掲句のように秋も深まってくると赤くなる葉は更に赤くなって、山里の秋は更に鮮やかさが増してきます(写真:ホオズキの実:2008/10/04)。
紅葉にはまだ早いこの時期、小滝病院跡ではマムシ草の実が色づきはじめていました。赤く色づき、そしてこんなに大きいと林の中でも一際目立ちます。びっしり種がついたマムシ草の実は夏から秋へ、どんどん大きくなっていき、先端から色づきます(写真:マムシグサの実:2008/10/04)。