峠みちを歩く
漱石の小説「坑夫」のなかの主人公が、足尾に入る場面で述べている部分があります。
「山の中の山を越えて、雲の中の雲を通り抜けて…。」
当時、足尾に入るには険しい峠道を、自分自身の足で、ワラジやゲタ履きで越えなければならないものでした。今日では舗装された道を、自動車で越すか、または峠下を貫通したトンネルのなかを、難なく通り抜けてしまうだけです。
その結果、利用されなくなった峠道は、山歩きに関心のない方方には、忘れられつつあります。
峠道、それは
「山の中の山を越えて、雲の中の雲を通り抜けて…。」 行く道です。
そこには『幸せ』がありますか・・・。
♦ 山のあなた カール・ブッセ ♦
山のあなたの空遠く 幸(さいはひ)住むと人のいふ。
噫(ああ)、われひとゝ尋(と)めゆきて、涙さしぐみかへりきぬ。
山のあなたになほ遠く 幸(さいはひ)住むと人のいふ。「海潮音」上田敏