山野草(Ⅲ)
足尾山地の植生は、大きい標高差(約1,400m)と崩壊裸地での足尾固有の植生環境、そして過去の煙害による影響等、自然的にも人工的にも特異な条件のもとで成り立っています。
足尾山地の植生は、大きい標高差(約1,400m)と崩壊裸地での足尾固有の植生環境、そして過去の煙害による影響等、自然的にも人工的にも特異な条件のもとで成り立っています。
気候に関しては山地の標高が高いことから、夏は涼しく、冬は乾いた季節風が吹き土壌が凍結するほどの寒さですが、積雪はそれ程多くありません。
このような足尾固有の自然の中で育まれた植物群を紹介します。
Ⓐ 野紺菊 Ⓑ ジギタリス
Ⓒ ハリエンジュ Ⓓ ヘ ビ 草
『 野菊 (文部省唱歌)』
紅紫色の花が丘の上に咲いています。この場所は文象沢の右岸に位置する広道路地区で、文象橋たもとの石段をのぼった奥の石垣の上にあります。
観賞植物ジギタリスの広がる光景(上掲写真)には違和感さえ生じますが、ここ足尾山地は標高が高いことから、夏は涼しく、冬は土壌が凍結するほどの寒さになるところですのでジギタリスにとっては、おのずと生育に最適な環境になっているのかと思われます。
写真は、住人のいなくなった家の庭に咲く
"ジギタリス"の花ですが、10月に撮影したものです。5月~6月にかけて咲く、初夏のシンボル的な花なのになぜか秋に咲いていました。自然界の出来事は、人間には計り知れないものがあります(写真:2013/10/14)。
♦ジギタリスの種まき時期 :
本来は宿根草ですが、暑さに弱く、暖地では半日陰に植えても夏に枯死することが多いため、多くは二年草として扱われます。開花のためにはある程度の大きさに達した苗が冬の低温にあう必要があるため、タネを秋まきして翌々年の春に咲かせるか、または春まきして、翌春に咲かせます。秋または早春にロゼット状態の苗を入手して植えつけることもできます。
頂上に大輪の花を咲かせたユニークなジギタリス(写真:2020/06/09)。
一般に見られるジギタリスは、直立した茎に、鐘の形をした花が、斜め下向きに総状につき、下から咲きのぼります。が、上り詰めたあげく大輪の花を咲かせてしまいました。自然界の出来事は、人間には計り知れないものがあります(上掲写真)。
円形に切り抜いたアップ写真は、茎のてっぺんで誇らしげに咲く、ジギ太くん & タリスちゃん です。
白く美しい花、食用にもなる花、ハチミツを採る蜜源植物の中で最もメジャーな花。
童謡の、「この道」 をくちずさみながら、舟石林道の小道を散策いたしましょう。
満開のニセアカシアと出川橋梁(写真:2019/06/05)。
♦ハリエンジュ : 花は白い蝶形で香りがよく、5月から6月にかけて10cm~15cmの総状花序を葉腋から垂らす。
上質な蜂蜜が採れ、花穂ごと天ぷらにして食べられる。
荒廃地緑化のために足尾では27種類の木本植物が植えられました。その中でもとくに数多く残り、復旧に大きく貢献した樹種の一つがハリエンジュです。
他の木本類が生育できない痩せた土地や海岸付近の砂地でもよく育つ特徴があり、古くから治山、砂防など現場で活用されており、日本のはげ山、荒廃地、鉱山周辺の煙害地などの復旧に大きく貢献してきましたが、・・・。
近年、本来の植生を乱すなどの理由で、緑化資材に外来種を用いることが問題視され、「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されるなど、近年はあまり使われていません。
緑化や蜜源の目的で北アメリカから渡来。植栽され、荒廃地などの復旧に貢献したにもかかわらず、野生化しすぎて外来種問題のひとつに数えられるとは、とほほで御座る (?_?)。(-_-;)。
足尾町赤倉の初夏。 製錬所が盛んに操業していた当時 はげ山であったろう その山が今、満開のハリエンジュでクリーム色に輝いています。
子供のころ、ヘビノネゴザを 「ヘビ草」 と呼んでいましたが、この草の周辺でヘビに遭遇した事は一度も無かったナァー (*^_^*)y~~~。
同じ株から毎年繰り返し発生するので、ヤチ坊主のように盛り上がってるネ(写真:2019/06/05)。
鉱山付近など、植物の生育が限られている場所にも繁茂し、カドミウムなどの重金属を吸収、蓄積する特徴があるそうです。金山羊歯(カナヤマシダ)、金草(カナクサ)などと呼ばれることもあり、近くに鉱脈があることを示す指標植物として古くから利用されてきたようです。
そんな訳で、高山植物ならぬ鉱山植物と呼ばれることもあるそうです(写真:2019/06/05)。
♦ヘビノネゴザ :
4月頃に芽を出し11月頃には地上部の全てが枯れてしまう夏緑性のシダ植物。日本各地で村落の路傍や低山地から高山の明るい林床、泥のたまった岩上や、石のゴロゴロした地上などにややふつうに生じる。
和名は 「 蛇の寝御座・蛇の寝茣蓙 」 で、蛇が寝るゴザという意味の変わった名前がつくが、群生した株の間にヘビがとぐろを巻いているさまを思ってつけられたのでしょうか。