町なか散策
栃木県日光市足尾町は、かつて足尾銅山が存在した町です。
近代化産業遺産など、他の地域では見ることができない足尾の風景を求めて、気の向くままにのんびりと町なかを散策してみました。
栃木県日光市足尾町は、かつて足尾銅山が存在した町です。
近代化産業遺産など、他の地域では見ることができない足尾の風景を求めて、気の向くままにのんびりと町なかを散策してみました。
昨夜の雨も上がり、よい天気になりました。今日は「唐風呂橋」から散策を始めましょう。唐風呂橋は「餅ヶ瀬川」に架かる橋です。
私の好きな探偵小説(浅見光彦シリーズ)のなかで、この「餅ヶ瀬川」が事件の発端となった一編があります。
(内田康夫『遺骨』からの抜粋)(前文略)草木ダムの脇を走り、まもなく県境のトンネルを抜けると栃木県足尾町である。足尾町はたかだか人口が四千程度の小さな町だが、その割には警察署の建物は大きかった。もっとも、大きいのは入れ物だけで、中身の人員数はおよそ二十名。人口比率からいえば、本来なら日光署あたりの管轄下に置かれる、大型の交番でもいいくらいなものなのだろう。足尾町にこれほどの規模の警察署があるのは、かつての足尾銅山の繁栄を物語るなごりの一つである。(省略)浅見のソアラで餅ヶ瀬渓谷へ向かう。国道122号を逆戻りして、県境の手前で右折する。谷川沿いの登り坂だ。「この川が餅ヶ瀬川です」高沢が言った。(後略)
♦浅見光彦シリーズ:内田康夫原作の推理小説に登場するフリーのルポライター浅見光彦が、探偵として活躍する代表作品シリーズのひとつ。
◎本日の散策コース
a.餅ヶ瀬川に架かる唐風呂橋 ⇒
b.唐風呂橋から旧唐風呂橋を見る ⇒
c.唐風呂橋からオットセイ岩 ⇒
d.渡良瀬川の河川敷に下りる ⇒
e.ボタンヅルの花 ⇒
f.赤トンボ ⇒
g.オットセイ岩 ⇒
h.通洞駅 ⇒
i.神子内川での川遊び ⇒
j.ヨウシュヤマゴボウ
上掲写真は唐風呂橋、橋の欄干には足尾町の町獣「ニホンカモシカ」と、町花「コウシンソウ」の透かし彫りが施されています。これもまた足尾の地ならではの魅力的な景観を生み出しています。
唐風呂地区は足尾町の西南端の集落で、餅ヶ瀬川が渡良瀬川に合流する地点の台地にあります。唐風呂橋から南西の方向1600メートル程離れたところに県境の沢入トンネルがあります。
写真は唐風呂橋の上流に架かる
「旧唐風呂橋」を、唐風呂橋から写したものです。この橋の構造形式は、足尾の橋梁の中で最も数の多い「鉄筋コンクリート製上路式アーチ橋」で、なかなかスマートな造りの橋です。残念ながらこの
「旧唐風呂橋」は損傷が激しく、現在通行できません。
この餅ヶ瀬川上流に餅ヶ瀬地区があり、釣り人達にとっても良い渓相の川です。餅ヶ瀬川の流れが旧唐風呂橋と唐風呂橋を潜り抜け出るとすぐに渡良瀬川に合流します。
唐風呂橋から渡良瀬川の上流をみてみましょう。300メートル程上流にある「オットセイ岩」を見ることができます。また、「わ鐵」の車窓からも見ることができます。
唐風呂(からふろ)地区の入口付近から、河原に下りることができます。多くの花が咲いています。オオハンゴンソウ、ススキ、ブッドレア。
林の縁で、十字の形で咲いている白い花が目に飛び込んできました。
(白くて小さい四枚の花びらは、"花"でなく"ガク"だそうですが)
最初は樹木かと思いましたが、他の植物に覆いかぶさるようにして生育しているので、ツル性の植物と分かりました。
また葉の形状から、同じ仲間でよく似ているセンニンソウの花ではなく、ボタンヅルの花と分かりました。
♦ボタンヅル(牡丹蔓):葉は3枚の小葉からなり、ふちに鋸歯があるのが特徴。葉がボタンの葉に似ていて、つる性であることからこの名がついた。花はセンニンソウに似ているが、やや小さめ。有毒。
赤トンボは暑い夏を山地で越し、街に下りる頃は鮮やかな赤色になります。アキアカネは、主に成熟したオスの腹部が鮮やかな赤色になります。上掲写真のトンボは胸部側面の模様から おそらく足尾で夏を過ごしているアキアカネでしょう(^_^)。
唐風呂地区の入口近くにオットセイの形をした岩があり、オットセイ岩と呼ばれています。川に迷い込んだオットセイがこの場所まで溯上して来たが戻れず、そのまま岩になってしまったという、言い伝えのある岩です。
下流をじっと見つめ続けるその岩を見ると、私でさえしんみりとした気持ちになります。オットセイ岩の高さは約2.1メートル(実測)です。背景は、唐風呂橋。
写真は通洞駅前のモニュメントです。
以下現地説明文抜粋 『このモニュメントは、足尾町町制100周年の記念として建てられたものです。
台座の山形は、足尾の山なみを、空洞の部分は長い歴史を持った足尾銅山坑道を表しています。
赤銅(あかがね)に輝く上部は、足尾町の未来・発展を望む「飛翔」を表しています。
平成元年11月 足尾町』
夏の渓流は爽快感100%です。そーです。ここに居るだけで幸せなのです。神子内川は国道122号に平行して流れる最も入渓しやすい川です。
栃木平橋の下流にある駐車場から河川敷に下りてみましょう。この川の流れは、足尾の渓流を代表する渓相を呈しています。さわやかな風は木々の葉をそよがせ、水しぶきは岩肌を濡らします。
栃木平橋下流駐車場の隅に生えるヨウシュヤマゴボウに目が留まりました。先端に白色の花、基部に薄緑色の未熟な果実が総状についています。やがて茎が紅紫色に染まり、実がブドウのように垂れ下がる光景が見られるでしょう。
赤黒く熟した果実がブドウのように垂れ下がった写真は、塩の沢 散策時のものです(撮影:2019/09/20)。
少し疲れました、今回の町なか散策はこれくらいにしておきましょう。
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ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡):名は西洋産のヤマゴボウの意味ですが、有毒で食べられません。別名はアメリカヤマゴボウ。別名の通り北アメリカ原産で、日本の各地で繁殖している帰化植物です。